ゴルフ人口 底辺の「拡大」と「底上げ」の違いについて

他のスポーツ同様、ゴルフも底辺の拡大が必要と言われている。底辺の拡大、つまり、ゴルフをしたことがある人を増やすということだ。そして、そのためにゴルフ界では様々な活動がされている。その代表例がジュニアゴルファーの創出。週末に様々な団体がジュニアゴルフ大会を開催して、ジュニアゴルファーの目標となる場を設けている。又、春休みや夏休みには、各ゴルフ団体がゴルフレッスン会を開催し、ジュニアゴルファーのための活動をしていたりする。

しかし、これらはどれも素晴らしい活動だが、ふと疑問が生まれる。底辺の「底上げ」であって「拡大」にはなっていないのではないかと。

底辺の拡大について

底辺の拡大は、ゴルファーでない人をゴルファーにする、ということ。もしくは、ゴルフをするところまではいかなくても、ゴルフに興味を持たなかった人に興味を持たせる、ということだ。

とした時に、既存のジュニアゴルファーに対する活動の多くは「拡大」にはなっていないと考えられるのではないだろうか。

ジュニアゴルフ大会に出るゴルファーは、すでにゴルファーなわけで、すでに底辺の内側や底辺からかなり上の方に入ってきている人たち。ジュニアゴルフレッスン会に来る子供たちも、多くはすでにゴルフに触れている人たちだ。自分からすすんで触れたのか、親が触れさせたのかは様々だと思われるが、すでに底辺の内側に入ってきている人たちだろう。

底辺の内側にいる人たちへのアプローチは底辺の「拡大」ではなく「底上げ」だ。

底辺を拡大するために必要なこと

ゴルフは所詮娯楽だとしよう。現代において、その娯楽は種類が増えて、人々の日々の楽しみ方には選択肢が増えた。その中で、ゴルフがどのようにしたら、他の娯楽と共存、さらには勝つことができるのか。

そのキーワードは「エンターテイメント性」ではないだろうか。

いまだ、「おじさんや金持ちの道楽」というイメージが強く持たれているゴルフに、エンターテイメント性が多く含まれているということを、ゴルファーの底辺の外にいる人たちに訴える必要がある。

それがないと、ゲームなどインターネットを使った、時間や経済的に効率が良い娯楽と共存することや、それらに勝つことは到底できないように思う。

マンガや映画

エンターテイメント性をアピールして、底辺の拡大のチャンスとなるのがマンガや映画などのエンタメの活用。

マンガ「テニスの王子様」が2000年代に流行していた時はテニス人口が増えた。笹川スポーツ財団のデータを見るとそれが推測できる。2001年から2005年にかけて青少年(10代)の週2回以上と週5回以上のテニス人口が増えている。クラブ活動レベルでテニスをしていた青少年が増えたということだ。

テニスの王子様効果と断定できるものではないが、この時期にテニス界にスターが誕生するなどのテニス人口が増える大きな動きが無かったことや、テニス業界にいる筆者の知人(テニススクール運営会社)の「テニスの王子様効果があった」という声を踏まえると、テニスの王子様が大きく影響したといえるだろう。

2005年から2009年はテニス人口が減り、結果、2001年と2009年は変わらない、という調査結果だったが、この一時的でも人口が増える、ということが今のゴルフ界にとっては必要なことだ。そうすれば、辞める人もいるものの、続ける人も一定数期待することができるだろうし、辞めた人もいつか再開することがあるかもしれない。

ロボ×レーザービーム

そのようなエンタメをきっかけにした人口増加、という点において、2017年にゴルフ界にチャンスがあった。ロボ×レーザービーム(略称ロボレザ)というマンガの登場だ。

珍しいゴルフを題材にしたマンガということで注目を集めた。しかも作者は黒子のバスケというマンガで有名な藤巻忠俊氏。しかし、残念ながら第7巻で終了となってしまった。

途中までは、ストーリーの面白さだけでなく、ゴルフに関する学びもあった。筆者が運営しているサイトでは新刊が出るたびに、ストーリーを簡単に紹介しながら、ストーリーの中で出てくるテクニックや考え方などを掘り下げて解説していた。

しかし、終盤は無理に速い展開になった。おそらく、ロボレザの終了が決まったからだろう。

筆者としては、面白く読みごたえがあったのだが、マンガ愛好家には響かなかったということだろうか。

もし、ロボレザがテニスの王子様のように受け入れられれば、ゴルフのエンターテイメント性が認知され、ゴルフ人口が今より増えていたかもしれないと思うと歯痒い気持ちになる。

まとめ

ゴルフ人口の拡大、ジュニアゴルファーの創出、を目指す場合、エンターテイメント性の活用は不可欠だ。そのエンターテイメント性をアピールする役割を果たすのはプロゴルフの世界だけではない。マンガや映画などを活用しても、アピールすることができる。

あとの祭りだが、ゴルフ団体はロボレザを使ったゴルフプロモーション活動にトライしてみてもよかったのかなと思う(ロボレザを刊行している集英社を巻き込んで)。

有名選手がロボレザ内のセリフを発する→メディアが取り上げて発信する→ロボレザが認知される→ゴルフのエンターテイメント性のPRになる、といった具合だ。ゴルフ団体発で、エンタメを創り出すというのも魅力的だ。現状、既存のエンタメを活用すること以上に無理な話だが、想像するとワクワクしてしまう。

大会の開催だけでなく、「底辺を拡大する」活動がもっと活発になると良いと思う。

本記事はnoteから移したものです。

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